き裂成長経路解析コードの開発のうち本年度は、ホスト・コンピュータに専用回線で直結されたパソコン(FACOM 9450-【II】)を用い、入力データの作成を対話型で処理し、かつ作成されたデータをグラフィック表示およびプロッタ出図する前処理プログラム(プリプロセッサ)の開発およびパソコン側で作成されたファイルのホスト・コンピュータへのデータ転送とその各種方法の得失の検討を行った。さらに、ホスト・コンピュータによる計算結果のうちき裂経路、変形を直接ホスト・コンピュータのグラフィック処理ルーチンを用いパソコンのグラフィック画面に転送し、計算結果の妥当性を直ちに検討できるような後処理プログラム(ポストプロセッサ)も開発した。 対話型データ入力については、入力マニュアルを参照することなくメニュー方式で入力可能とし、また有限要素メッシュ分割図をタブレット(座標読取デバイス)に置き、ここから直ちに図形入力できるようにした。完成したメッシュ分割図などは、プロッタに出図して保存する。き裂経路追跡中の変形図などは、必要に応じてデータをホストからパソコンへ転送しプロッタ出図可能である。 実際の計算例として、き裂成長経路上に設けた円孔のき裂阻止機能のシミュレーションを行った。初期き裂の延長線と円孔縁の距離を各種変化させた計算を行ったところ、き裂が円孔縁でわく曲し、円孔に貫入し成長を阻止されるのは、き裂先端と円孔縁の最短距離が円孔の半径以下に接近する場合であることが確認された。き裂が円孔の直上あるいは直下を通過する場合でも円孔による引張り型の応力拡大係数の低下は少なく、材質的な意味でのき裂阻止は期待しにくい。き裂成長経路上には、溶接残留応力が存在することが多く、この影響を考慮すべく解析法の改良を行うのが次年度の課題である。
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