本研究ではSMAC-B2型強震記録の長周期帯域に及ぼす種々の影響を地震観測と振動実験から検討し、SMAC強震計の周期特性に関して10秒程度まで信頼に足るものとする方法を示した。さらにこの方法を過去の記録に適用し、得られたデータを用いて加速度応答スペクトルの距離減衰式を提案した。以下に本研究で得られた結果を示す。 (1)SMAC記録の加速度応答スペクトルは他の強震記録のそれよりも長周期帯域において2倍程度以上大きくなる。このSMAC記録波形を詳細に検討した結果、肉眼では識別できない程度のゼロ線のドリフトやシフトが生じていることが判明した。このゼロ線のシフトを加速度に換算するとおよそ10galにおよぶ例もあった。 (2)このゼロ線のドリフトは、地震計のペンと記録紙の間の固体摩擦に起因しており、SMACの振動系と記録系を連結するバネが十分なバネ定数を有しないために記録ペンを正しい位置まで引き戻すことができないものと考えられる。 (3)ゼロ線ドリフト波形のフーリエスペクトルからドリフトを構成する振動数成分を識別し、これをSMAC記録のスペクトルから差し引くことでSMAC記録をほぼ適切に補正することができた。この補正法を用いてSMAC記録を補正した結果は、他の強震計記録とよい対応を示した。 (4)過去のSMAC記録194成分を補正し加速度応答スペクトルのアテニュエーション式を提案した。これを土木研究所および新耐震設計法によるスペクトルと比較した結果、土木研究所によるものが全周波数帯域にわたって最も大きな値をとり、おおむね0.1〜2、3秒程度までは提案するスペクトルが他の2つのスペクトルの中間に位置し、それ以上では下回る傾向を示した。
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