コンクリート構造物の製作過程に生じる初期欠陥、特に温度応力に関する実験的研究、および理論的研究から、その初期欠陥量を明らかにする事、また初期欠陥が構造物の終局耐力に及ぼす影響を明らかにする事を目差した。成果として以下の結果が得られた。 〔初期欠陥(温度応力)の発生機構に関する研究〕 マスコンクリートの大型実験(長さ15m×高さ2m×巾0.3m)から、軸方向の温度変形ばかりでなく、上下方向の温度曲げ変形の存在、および、その発生メカニズムが明らかとなった。新コンクリートと拘束体の間には、理論解析から指摘されていたようにすべりのある事も確認された。 初期欠陥量を推定する理論解析手法として、(a)3次元、(b)2次元アイソパラメトリックFEMプログラム、(c)有限プリズムFEMプログラムの精解法、また(d)コンペンセーションライン法、(e)コンペンセーションプレイン法の簡易法を開発した。(a)、(e)の方法は、土木学会RC示方書の中へ取り入れられた。 〔温度応力によるひびわれの巾を抑制する方法に関する研究〕 任意の鉄筋配置、誘発目地などにより発生するひびわれの巾がどの程度になるか推定するプログラムを、有限プリズム法により開発した。 〔初期欠陥(温度応力)そのものの抑制方法に関する研究〕 パイプクーリングによる熱応力低減効果を解析しうる解析コードを、任意のパイプレイアウト・冷却水流速、冷却水入口温度に対して開発した。 〔初期欠陥が構造物の終局耐荷力に及ぼす影響に関する研究〕 終局状態のコンクリート、および鉄筋の非線形性を考慮し、かつ初期欠陥の影響を考慮しうる弾塑性解析から、初期温度応力が20%以上の耐荷力低減をもたらす場合のある事が判明した。
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