遅延型流動化剤を用いた流動コンクリートの実用化を目的とし、室内実験を主体とする基礎研究ならびに現場実験による実証を行った。 基礎研究としては、フレッシュコンクリートの諸性状ならびに硬化後の力学的性質と耐久性を実験的に把握し、その効果的な使用方法について検討した。各研究分担者が、それぞれの研究分野について共通に比較した流動化剤は7社7銘柄で、この他に各分担者が独自の判断で対象サンプルを追加した。この結果、1)遅延型流動化剤はそれぞれスランプロスの低下に有効であることが判明したが、その程度には差が認められた。両性界面活性剤に属する流動化剤が今回初めて評価の対象となったが、他のサンプルと比べスランプロス防止で格段に優れていることが判明した。2)流動化剤の種類は空気混入特性と耐凍結融解性に影響があり、ベースコンクリートに用いるAE剤の選定に注意を要する製品が認められた。3)時差添加、後添加、ダブルミキシングなどの練りまぜ条件は、流動化剤の使用量やスランプロス防止効果に大きな影響を与える。流動化剤使用量を少なくできる練りまぜ条件では、スランプロスが多くなることが認められた。 現場実験では添加方法、ミキサの種類、施工時の気温を主な要因とした。大型施工実験においても遅延型流動化剤の効果は認められたが、スランプ増大量やスランプロス防止効果はミキサの種類によって異なる。圧縮強度やブリージングは室内実験と同様に、流動化剤の悪影響は認められなかった。しかし流動化剤の種類によっては、室内実験の場合より動弾性係数低下率が大きく耐凍結融解性に若干検討を要するものが認められ、この事は気泡間隔係数の実測によっても裏付けられた。ベースコンクリートに混入するAE剤の種類および使用量を慎重に定めることが重要である。
|