本研究代表者らは、鋼梁-柱の一定軸力下・完全両振り繰返し曲げ実験を行い、次の3種類の終局挙動を見出した:SC.対称定常状態への収束挙動、AC.非対称定常状態への収束挙動、DV.逆対称たわみ成分が発散する挙動。更に、SCとAC、ACとDVをそれぞれ分離する対称限界および定常状態限界を定義し、履歴挙動を追跡せずにこれらの限界を求める理論の基礎を既に確立している。ここでは、この理論に基づいて、鋼構造梁-柱の繰返し両振り曲げ外乱に対する実用靱性設計基準の提案を目的として研究を展開し、以下の成果を得た。 1. 鋼梁-柱の対称限界振幅が、非定常履歴非線形応力〜ひずみ関係に従い任意の2軸対称断面をもつ梁-柱モデルについての対称限界理論解析によって非常に精度よく予測できることを、履歴挙動解析結果との比較によって実証した。 2. 2次的因子が対称限界に及ぼす影響を、対称限界理論に基づいて解明し、次の知見を得た。 (1)鋼の骨格応力-ひずみ曲線がもつ降伏棚の影響で、対称限界曲線には不連続が1箇所現れる。 (2)残留応力の存在によって、対称限界振幅は常に僅かに大きくなる。 (3)角形鋼管のフランジに局部座屈が発生することにより、対称限界振幅が小さくなる場合と、大きくなる場合がある。 3. 非線形応力〜ひずみ関係に従い任意断面をもつ梁-柱モデルについての定常状態限界理論を展開した。これによって、対称限界が定常状態限界の良好な安全側近似であることを示した。 4. 角形鋼管梁-柱の段階的振幅漸増両振り曲げ実験を行い、その結果と対称限界理論による解析結果とがよく対応することを示した。 5. たわみ角振幅の十分大きい指定値に対して軸力比〜細長比平面上での対称限界曲線を求め、これを設計基礎曲線として提示した。
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