炭層ボーリングにおいてボーリングマシンに加わる負荷トルクと石炭の力学的性質および地圧との関係、さらにジャミングの発生条件を解明するために、直方体の石炭試料を用いてボーリングの模擬実験を行った。その結果、石炭試料に加わる応力が増加するのに伴って削孔時の負荷トルクおよび排出繰粉量が増大し、さらに最大主応力が石炭の単軸圧縮強度の3倍以上の地圧条件下ではジャミングが発生することが明らかになった。またジャミングが発生する際には、ボアホール周壁及び孔底先端で石炭が破砕することが確認された。さらに模擬実験に加えてボアホール周辺の変形・破壊を理論的に解明するために、石炭を線形ひずみ軟化を有する連続体としてモデル化し、軸対称問題の解を導き、あわせて数値計算を行った。その結果、ボアホール周辺の降伏域半径および内空変位は、石炭の破壊後の変形特性が脆性的なほど、また平均炭層地圧が増加するほど飛躍的に増大することが立証され、トルク検層の有効性が実験的のみでなく理論的にも裏づけられた。以上の基礎研究の成果に立って、本研究では炭鉱坑内にも適用できるトルク検層機器を開発した。計測機器はボーリングマシンの負荷トルクを検出し信号を送信するための非接触型のテレメータ発信機、トルク信号を受信するためのテレメータ受信機、およびトルクを連続的に記録するためのデータレコーダから成り、これらはそれぞれ本質安全および耐圧防爆構造となっている。これらのトルク検層機器を炭鉱の現場試験に適用した結果、ボーリング作業に何ら支障を来すことなく削孔時のトルクを連続的に計測しうることを確認することができた。また3孔のトルク検層試験の結果、トルク検層は切羽前方の高地圧帯の探索のみならず、ノンコアボーリングにおける岩相の判定や、断層等の地質的不連続面の探査にも有望な計測データを提供しうる可能性があることが示された。
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