本研究の目的はコンピュータ・トモグラフィの技法によって透過電子顕微鏡により得られた像を3次元解析する技法を開発することにある。薄膜透過型電子顕微鏡像は本年3次元の透過観察をしたものであり、計算機画像処理の力を借りればその3次元立体の微細な組織を把握する事ができる。昨年度は写真からとり込んだイメージより、より明瞭な像を得るための高速フーリエ変換を中心にした手法の開発が中心であった。本年度は画像処理演算ボード及びMTシステムを購入し、画像処理の速度の向上とデータの蓄積を容易になるようにした。システム全体を用いる基本プログラム作成は進行中である。透過電子顕微鏡による試料観察としては粒界転位の3次元的微細構造の把握を中心としている。これは一方向凝固によって任意の方向関係の粒界を有するアルミニウム双結晶を作成しその方位関係の相違による粒界転位の配列の相違を求める事が目的となる観察であるが、3次元的な配列そのものが重要である事、試料厚さによる等厚フリンジと粒界の等厚フリンジが転位像に重なり、これを取り除いて明瞭な像を得る事が当研究のテーマに合致しているものであるためこの観察を中心とした。等厚フリンジを除去するためであるため最初は粒界のフリンジが生じない共通回折の条件での撮影を行った。回折波が弱く励起されている条件で得た暗視野像では粒界の部分で等厚フリンジがずれており、画像処理によってこのずれ成分を求めて整理したところ粒界における双方の結晶の並進成分によるものである事が明らかになった。当初の目的とは少し離れているが複次的な成果としては価値の高いものであるので記しておく。このようにして転位のみのイメージを取り出す手段はほぼ完成したので現在はこのイメージをもとに3次元立体とするプログラムを開発している。これらの成果のうちいくつかは昨11月水上で開催された金属学会国際シンポジウムにおいて発表された。
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