研究概要 |
本研究の目的はステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料の孔食を中心とする局部腐食の抑制剤としてのヘテロ環有機化合物誘導体の新規合成と、それ等の有効性を評価する為の交流インピーダンス測定法の開発の二部から成る。第一部である有機インヒビターの開発では、幾つかのヘテロ環誘導体の合成を試みたが、その内ではピリミジン誘導体が比較的有望であることを見い出した。ピリミジンについて幾つかの置換基の異なる誘導体を合成し、効果を調べたところ、環の2位の所にO又はSを持つ置換基が入ったものが最も有効であることがわかった。チアゾール誘導体についても合成及びインヒビター評価を行なったが、これは置換基に関係なく概ね良好な結果を得た。またこれら化合物は吸着型であり、アノード,カソード共に抑制する混成型であることがわかった。しかし従来から抑制効果の大きなクロム酸塩や亜硝酸塩に比べるとその効果は1/3〜1/5程度で、あらゆる条件の孔食を完全に抑制できるには至らなかった。第二部である交流法による抑制効果の評価法については、局部腐食の継時変化を短時間に測定する目的からFFT法によるインピーダンス解析法を採用した。本法は一点の測定を数秒以内で行なえる為に、かなり速い変化まで追跡できた。その結果、孔食発生までの誘導期間中は抵抗成分の減少が著しく、また孔食が発生すると抵抗は一定値となることを見い出し、更に抵抗の送数が腐食速度に対応することが明らかとなった。実際に無機インヒビターや開発した有機インヒビターを用い確かめたところ、有効なインヒビターは抵抗変化はなく、インヒビターの効果の程度の抵抗の大きさと、その時間変化で評価できることがわかった。このことは孔食が発生が起らない数分間にインヒビターの評価が可能であり、モニター法として充分役立つことを明らかとした。
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