本研究の目的である「座標格子法」を溶接部材に応用するための、マイクロパターン自動計測装置は、初期の計画通り完成させることが出来た。交付申請書に基づき、その経過及実績を述べれば以下のようである。マイクロパターン自動計測装置の主要ハード部分およびコントロールソフトウェアを含むシステム全体は、昭和59年度中に完成させている。昭和60年度は、まず座標格子法にもとづくひずみ解析とひずみ分布のグラフィックのためのソフトウェアを開発している。これにより、当初予定していたマイクロパターン自動計測システムを完成させることが出来た。引続いて、開発したシステムにより、異材溶接継手部の高温変形の解析を試みたが、座標格子法のためのマイクロパターンに当初予想していなかった欠点のあることが判明した。従来マイクロパターンとしては、2つの直線が直行するモアレ法のためのパターンを用いていたが、このパターンであると測定精度は当初の目標(±1μm)は達成できるものの、測定時間が長くデータ処理の迅速化という点で不完全であることがわかった。そこで、データ処理の迅速化を達成させかつ測定精度もさらに向上させるため、直径5μmの微小円形ドットの規則的配列から成る新しいマイクロパターンを試作している。 以上のマイクロパターンおよび自動計測システムにより、HK鋼、インコネルおよびCr-Mo鋼から成る異材溶接継手部の高温クリープ変形を測定した結果、幾つかの新しい知見を得ることが出来た。とくに、クリープき裂発生との関連において興味あることは、クリープき裂の発生個所が変形拘束の大きい見掛け上変形の小さい個所と一致することである。このことは、変形の小さい個所では拘束応力が著しく上昇することを意味しており、異材継手の安全性確保の上で重要な知見である。
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