本研究では、液相拡散接合の実用化を図るに当たり、まず液相拡散接合性に及ぼすインサート金属のアモルファス箔化の効果を検討するためNi基超合金を用いて種々の実験を行った。さらに、液相拡散接合の応用範囲を広げる目的で、新たに低融点のTi-Zr-Cu-Ni合金を開発し、そのアモルファス箔を用いてTiおよびTi合金の液相拡散接合を試みた。その結果、次のような点が明らかにされた。 (1)液相拡散接合において、インサート金属をアモルファス化して用いるとインサート金属自体の組成が均一になり、また接合時に生じる溶融層が薄くなる。このため溶融層の等温凝固時間および接合部の均質化に要する時間が短縮される。 (2)インサート金属の組成と母材の組成が異なり接合部の均質化に時間がかかる場合や、インサート金属中に介在物を形成しやすい元素が含まれている場合には、アモルファス箔化の効果が顕著になる。 (3)継手の応力-破断強さは、接合に使用するインサート金属の組成によっに大きく影響を受ける。従ってインサート金属の組成を十分考慮したうえでインサート金属のアモルファス箔化を行うことが、接合性の向上に有効である。 (4)新たに開発したTi-Zr-Cu-Ni合金のアモルファス箔をインサート金属として使用することにより、CP-TiおよびTi-6Al-4V合金を、母材の変態点以下の温度で母材の組織を変えずに接合することができる。また、接合継手の引張強さおよび延性は母材と同等の値を示し、塩水浸漬による腐食試験の結果も高い耐食性を示した。 (5)接合部のEPMA分析結果では接合層中に残留しているCuおよびNiは極めて少量であり、また、接合温度に再加熱しても接合部が再溶融しないことなどから、接合部では等温凝固が完了していると考えられる。従って、本研究で用いたTiおよびTi合金に対しても液相拡散接合の適用が可能であることが明らかとなった。
|