本研究は微量合金元素の添加により、溶接熱影響部の応力腐食割れ防止を目指した新しい溶接構造用Al-Zn-Mg合金の開発を目的として実施したものである。Al-Zn-Mg合金の応力腐食割れは腐食溶解型であり、耐食性が良好であれば応力腐食割れ抵抗も大きい。したがって本研究は耐食性に重点を置いて実施した。 新合金として、種々の微量元素すなわち0.2%Cr、0.5%Mn、0.05%Tiおよび0.2%Fe-0.1%Siを個々に添加したAl-4.5%Zn-1.2%Mg合金およびさらに耐食性の向上を目指してCr、ZrおよびCuを0.1%から1%まで種々の量添加したAl-4.5%Zn-1.2%Mg合金を作製した。これらの個々の微量元素が溶接部の時効特性および耐食性におよぼす影響を金属組織学および電気化学を基礎に明確にした。なお、耐食性の評価はアノード分極による孔食電位により行った。以下得られた結果を示す。 1.Al-4.5%Zn-1.2%Mg合金へのCuおよびCrの添加は孔食電位の増加を生じる。しかしいずれも0.2%以上の添加では孔食が粒界に優先的に生じるため、粒界応力腐食割れを助長する。耐食性および応力腐食割れを考慮すると0.2%Crおよび0.2%Cuの添加が有効である。 2.Al-4.5%Zn-1.2%Mg合金への0.05%Ti、0.2%Fe-0.1%Siあるいは0.5%Mnの添加は結晶粒の微細化には効果があり、応力腐食割れ性には効果があるが、孔食電位にはほとんど影響をおよぼさない。 3.Al-4.5%Zn-1.2%Mg合金への0.2%までのZrの添加は孔食電位を低下させず、結晶粒の微細化には顕著な効果があるが、0.5%以上添加すると孔食電位を低下させ、耐食性および耐応力腐食割れ性を劣化させる。 4.以上の知見から、溶接熱影響部の耐食性および耐応力腐食割れ性を改善した合金として、Al-4.5%Zn-1.2%Mg合金に0.05%Ti、0.2%Cr、0.5%Mn、0.2%Fe-0.1%Si、0.2%Zrおよび0.2%Cuの微量合金元素を添加した合金を開発し、その有用性を実証した。
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