1.2-プロパノールおよびシクロヘキサンの液相脱水素反応は、生成する水素が反応媒質から自然に排出されるため、良い触媒さえあれば速やかに進行する。生成物のアセトンおよびベンゼンからは、より高温度で水素化熱が回收されるので、正逆両反応と生成物分離で構成されるシステムは、熱エネルギー/化学エネルギー変換を通して、ヒートポンプあるいは水素輸送に適用することができる。本研究の目的は、高活性・高選択性触媒を開発してシステムとしての基盤を確立し、エネルギー化学プロセスに向けての適性評価を行なうことにある。 2.ガス中蒸発法で調製された微粒金属ニッケルは、82.4℃の反応温度で2-プロパノールを選択的にアセトンと水素に分解し、その活性は136mmol【h^(-1)】【g^(-1)】、少量の白金で修飾するとさらに向上して286mmol【h^(-1)】【g^(-1)】に達した。しかも本触媒は熱濁分散性が高いため液相空間速度が大きく、伝熱律速となるほどで、充分実用性をもつことがわかった。多孔性活性炭に担持した同じ微粒金属ニッケルはアセトン水素化反応の良い触媒となり、両反応と分離操作を組合せたケミカルヒートポンプシステムが、経済性調査の対象となった。地熱排熱水(150℃)を水蒸気(150℃)に変える10t【h^(-1)】規模のプラントについて積算した結果、水蒸気価格によっては充分償却可能と結論された。 3.微粒金属ニッケルは、シクロヘキサンに対しても液相脱水素活性を示すことがわかった。逆反応のベンゼン液相水素化は既に確立した技術なので、シクロヘキサンを液体輸送すれば、水素輸送システムを組上げることができる。水素貯蔵密度・安全性・価格面で優れており、触媒特性の向上によって、具体的提案にまとめるべく檢討中である。なお、高温度で行なうベンゼン気相水素化反応と組合せると、回收温度の高いケミカルヒートポンプが構成される。ゼオライト担持高分散ニッケル触媒に、極めて高い水素化活性のあることが確かめられた。
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