研究概要 |
1.サイクリックボルタメトリーの波形から細菌を識別する事を試みた。グラファイト電極にメンブランフィルター上に吸着固定した細菌を直接装着し電位走査(0〜1.0VvsSCE)を2回くり返した。1回目に得られるピーク電流値に対する2回目のピーク電流値の割合はグラム陰性菌では80%以上、グラム陽性菌では50%以下であった。 このピーク電流値の割合とピーク電位の違いを用いることにより、グラム陰性菌とグラム陽性菌を識別できた。 また、これらの細菌においても細胞内の補酵素Aが細胞の電極反応を媒介することが示された。 2.動物細胞の識別についても検討した。細胞としてT,Bリンパ球,マクロファージ,赤血球,マウスの胆肝がん細胞を用いた。サイクリックボルタメトリーは細菌と同様の方法で行った。T,Bリンパ球,マクロファージ,赤血球のピーク電位は0.64〜0.65V(vsSCE)でがん細胞では0.64〜0.67V(vsSCE)であった。 2回目のピーク電流値はすべての細胞でほとんど得られなかった。また、動物細胞においても補酵素Aが細胞の電極反応を媒介することが示された。 3.ボルタメトリーを用いたモデル感染尿の検出について検討した。モデル感染尿は尿をフィルターにより滅菌し、この尿の中にモデル病原菌として大腸菌を加えて調製した。一般に、感染尿は【10^5】cells/ml以上の菌濃度を示し、非感染尿では【10^3】cells/ml以下の菌濃度とされる。そこで感染尿と非感染尿の識別を電極を用いて行った。モデル尿に同量のRogosa培地を加えて3時間培養し、集菌後細菌をグラファイト電極に直接装着しサイクリックボルタメトリーを行った。感染尿(初期菌濃度【10^5】cells/ml)においてピーク電流値は0.4μA以上であった。非感染尿(初期菌濃度【10^3】cells/ml)では0.2μA以下であり、この方法により3時間で感染尿の検出ができることが示された。また、抗生物質を加えて培養しピーク電流値を測定することにより耐性菌と非耐性菌を識別できた。
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