地表近くに堆積している石炭は経済的な採掘が容易であるが、地表水面により、上に位置する石炭は堆積時に風化されている場合が少なくない。高炉用コークス製造に適する高ランクの石炭でも、風化によりその溶融性が減少する。原料炭を採掘する際には、あらかじめ多量の風化炭を採掘しなければならないので、同炭の利用を拡大することは極めて重要である。本年度は、カナダ産の風化クィンテットおよびバルマー炭を各々の未風化炭と比較しながら炭化特性を調べ、さらに風化炭から共炭化ならびに共予熱処理成型コークス法により、高強度で光学的異方性組織のよく発達した高炉コークス製造を試みた。 クィンテット炭、風化クィンテット炭からセミコークスの光学組織は、後者では、全体として異方性組織が縮小しているにもかかわらず基本異方性組織とならんで光学組織の広いD(ドメイン)組織がかなり多く展開していることが認められた。このドメインD組織は準無煙炭から発現する組織に類似しており、風化炭も基本異方性を示すことから、前秩序転換機構により同組織が展開したのであると思われる。 一方、バルマー炭はクィンテット炭より寸法の大きい異方性組織を展開した。これは、バルマー炭の方が石炭化度が高いことと対応している。風化バルマー炭では急速昇温でFD(フロードメイン)組織が多く認められているもののA240との急速昇温共炭化においても溶融せずにBを示す粒子が多いことから、石炭化度の高いバルマー炭では風化により溶融性の低下する基本異方性組織を示す粒子は無煙炭に近づいたと推定される。つまり風化は見掛け上石炭化を進めたことに対応する。 上述のような風化により溶融性が低下した石炭でも、適切な条件下で共予熱処理後、成型コークス化すれば、引張強度が200kg/【cm^2】以上に達する。
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