研究概要 |
1.アミノアルキルマロン酸の脱炭酸反応における高選択性発現の要因の解明と重水素化アミノ酸錯体の合成-Λ-β特異性を示す二種の四座配位子(5R,7R-【Me_2】-2,3,2-tetと1,5R,7R,11-【Me_4】-2,3,2-tet)合成し、それらのCo(【III】)錯体を用いてα,α-アミノメチルマロン酸(AMM)の脱炭酸反応について検討した。その結果、四座配位子の末端にN-メチル基の無い場合【(+)_(577)-〔Co(AMM)(5R,7R-Me_2-2,3,2,-tet)〕^+】(【II】)と有する場合【(-)_(546)-〔Co(AMM)(1,5R,7R,11-Me_4-2,3,2,-tet)〕^+】(2)とでは得られるアラニン錯体の生成比に大きな差が観測された。(R/S=34/66(【II】)83/17(2)。 この差の生じる要因を明らかにするため、両錯体の構造をX線解析により決定した。その結果、両者の構造はよく似ており、AMMは分子内水素結合を含む三点結合により、プロキラル中心が高度に識別された配位をしていることが明らかとなった。以上の事実から脱炭酸反応における選択性は、前駆体のAMMの配位様式には依存せず、【H^+】の攻撃の方向により決定され、四座配位子の末端のN-メチル基は選択性の向上に対して極めて有効であることが判明した。さらに【II】と2の錯体について重水中でDClによる脱炭酸反応を試みたところ、HClによる場合と変らぬ不斉選択性でα位が重水素化されたアラニン錯体が生成していることがNMRスペクトルにより確認された。 2.コバルト(【III】)に配位した【NH_2】,NHの部分的重水素化による【^(13)C】NMRシグナルの分裂-HをDに置換すると、その近傍の炭素原子の【^(13)C】シグナルがわずかに高磁場側にシフトすることが知られている。交換可能な水素原子(NH,OH等)を半分だけ重水素に置換した状態で【^(13)C】NMRの測定を行うと、H型とD型とに対応して、注目している炭素の近傍の官能基の種類に応じて特徴的に分裂した多重線が観測できる。この手法が配位化合物に応用できることを初めて明らかにした。
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