1.顕微けい光測定用全反射光学系の試作 落射けい光顕微鏡BHS-RFKの試料台に高分子材料を密着させたサファイア基板をおく。基板の端面より、励起光として用いるエキシマーレーザー(308nm、6ns)を、全反射条件となる入射角度で導入する。入射角度で深さ方向を選定し、顕微鏡の試料台を動かして二次元方向の微少空間領域を選ぶ。レーザーおよび顕微鏡は固定されており任意に動かせないので、レーザーミラー、回転ステージを用い、ミラーホルダーの垂直方向の微調を可能にする特殊な光学系を製作した。顕微鏡の出射口には可変アパーチャーをセットし、けい光を小型ホトマルで検出した。アパーチャーはxyホルダーステージに固定し、空間分解能を更に高めた。これにより深さ方向数百Å、二次元方向10μm程度の分解能が得られている。 2.絹における色素の深さ方向の分布 繊維の風合を決定する因子の一つとして、色素の種類、濃度に加えその深さ方向の分布があると考えられている。しかしながら従来のESCAやFT-IR法のような手段では明確な知見は得られなかった。本研究においては、紅花あるいはうこんで染色した絹をとりあげ、けい光マイクロプローブの有効性を検討した。エキシマーレーザーで励起すると、400nm以下に絹のけい光、長波長側に色素のけい光が観測される。垂直方向からつき抜ける方向に、励起すると、絹と色素のけい光はほぼ等しい強度であったが、入射角度を増していくと、絹のけい光の寄与が増してくる。従ってこの繊維の場合、色素は内部にくらべ表面では余り存在していないものと考えられる。うこんと紅花の両色素を含んでいる場合には、両色素の深さ方向の分布に差があり、それが独特の風合をかもし出すものと期待されたが、本方法によればとくに差は見出されなかった。
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