1.静岡県で発見されたコガネムシ幼虫寄生のSteinernematidae科線虫(新種?)は、現在アメリカ、オーストラリアから輸入している数種類の線虫よりも遥かに殺虫力があり、線虫による生物的防除はわが国において、新しい展開が期待される(林業試験場)。 2.次の害虫には、有望な防除手段になることが判明した。ギボシカミキリ(日化)、マツノマダラカミキリ(林試)、ゴマダラカミキリ(果樹試)、コナガ、アワヨトウ、ハスモンヨトウ、カブラヤガ(九州農試)、三重大、野菜試、佐賀大)、アメリカシロヒトリ(SDSバイテク)、芝草りん翅目害虫(静岡大)、コガネムシ(林試、王子製紙)、ミノガ(福岡林試)、ニクバエ、キンバエ(予衛研)。一方、実験的には殺虫性を示しても実用性は認められないものは、イネミズゾウムシ(北陸農試、三重大)、ウンカ、アブラムシ。 3.コガネムシ幼虫に対するバーク堆肥混入施用は、Steinernema feltiaeよりも、S.glaseriでより高い防除効果が得られた(王子製紙)。 4.線虫の地上部施用には乾燥防護剤として卵白アルブミン(塩野義)、パラフィンと脂肪酸混液が有効である(佐賀大)。 5.施用線虫の土壌中生存は、土性による差が大きく、一般に粘土質(植土)土壌は砂質土壌よりも線虫の生存率を高める(佐賀大)。 6.nictating(立上る)行動は線虫の分散行動の1つであって、宿主侵入への前駆行動として必ずしも必要ではないが、nictatingを起す個体は宿主への侵入率も高い。この行動は土壌水分30%で最も起りやすい(佐賀大)。 7.線虫の感染に抵抗性を示す昆虫(例.カブラヤガ)は、線虫に対する誘引性が低いばかりでなく、血液中のポリフエノールオキシダーゼ活性が通常においてもきわめて高い。抵抗性昆虫も農薬との線虫混合施用で相乗的殺虫効果が得られ総合防除の可能性もある。
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