研究分担者 |
廿日出 正美 静岡大学, 農学部, 助教授 (40091152)
藤條 純夫 佐賀大学, 農学部, 助教授 (50011911)
正野 俊夫 国立予防衛生研究所, 衛生昆虫部, 室長 (80011922)
真宮 靖治 農林水産省林業試験場, 線虫研究室, 室長 (10256000)
近藤 栄造 佐賀大学, 農学部, 助手 (60039336)
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研究概要 |
本研究の当初の目的は、線虫によって農薬では防除困難な植物体や土中に隠棲する害虫を駆除し、あわせて農薬公害を軽減することにあった。確かに施用量を多くすれば100%近い効果は得られるが、多くの場合これは実際的でないように思われる。線虫の単独施用では充分に防除効果を挙げるのは困難であるが、農薬と適宜組合せることによって、極めて良好な効果をあげることができた。即ち農薬も線虫も単独施用では効果のない低濃度でも、混合施用により相乗効果が得られた。混合施用は減農薬となるばかりでなく、害虫に農薬抵抗性を生じさせない手段にもなった。また燻蒸処理土壌への施用は侵入害虫を効果的に迎撃するばかりでなく、有害線虫の急速な回復を抑制し、総合防除への展開を期待させた。以下に3年間の進歩を列挙する。 (1)コガネムシ幼虫に対し従来の輸入線虫より遥かに殺虫力の強い線虫が本邦で発見された。(2)マツノマダラカミキリ,ゴマダラカミキリ,キボシカミキリなどの難防除害虫には圃場施用で80%以上の駆除効果を得た。(3)麩、米糠油かすなど植物質培地では生産は劣るが、昆虫寄生の芽胞細菌との混合培養も可能で相乗効果が期待される。(4)ミノガ,シイタケバエ,アメリカシロヒトリ,ハマキガ,ハスモンヨトウ,芝草害虫等の防除に好成績が得られた。(5)コナガ,アオムシ,カブラヤガには農薬混合施用で抜群の防除効果があった。(6)混合施用は単に線虫が低濃度の農薬で刺激され、活発に活動するだけのようである。(7)乾燥下生存は線虫の体内にトレハロースが高まる。糖・脂肪酸エステルは有力な乾燥保護剤であるとともに、線虫の殺虫効果を高めた。(8)線虫と共生細菌には昆虫の液性成分の防御機構を破壊するものがある。昆虫の免疫システムを崩壊させるものであれば、興味ある展開が(昆虫生理学的にも、殺虫剤の開発にも)期待される。(9)線虫の大量施用で土壌節足動物相は一時的に動揺するが、持続しない。
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