研究概要 |
本研究では、まず既存の宿主-ベクター系が通用しない多くのグラム陰性菌において遺伝子操作技法を広く利用できるようにするため、広宿主域ベクターの開発とグラム陰性菌での汎用遺伝子操作系の確立を行った。広宿主域ベクターの開発では広宿主域プラスミドRSF1010を素材としててpMFY31(Ap,Cm,Tc,13.2kb)およびpMFY40(Ap,Tc,11.6kb)を作成した。P.putida株への導入を行い、ベクターの広宿主域性と接合伝達性が確かめられた。汎用遺伝子操作系の確立では、大腸菌における広宿主域コスミドベクターを用いたジーンライブラリーの作成→接合伝達法を利用した目的の宿主へのジーンライブラリーの導入とクローンの選択→大腸菌におけるサブクローン化と組換体の解析および接合伝達法を利用した目的の宿主での遺伝子活性の検定、を骨子としたシステムを検討して確立させた。 次に、この汎用遺伝子操作系を利用した有用酵素生産法の開発を目的として2種の有用酵素遺伝子の単離を進めた。【n!_】-アルカンおよびアルキルベンゼンに広い基質特異性を持つ酸化酵素系を支配するalk遺伝子の単離を試み、P.putida株からクローン化に成功した。更にサブクローン化とP.putida株への導入を行ない遺伝子領域の限定と発現試験を行った。この過程にはpMFY40が力を発揮し、その有用性が示された。菌体外プロテアーゼ遺伝子を目的としてP.fluorescens株のジーンライブラリーを作成し、P.putida株に導入して本酵素を分泌するクローンを検索したが得られなかった。そこで合成オリゴヌクレオチド・プローブを使用する遺伝子単離法を用いる事にし、本酵素の部分精製を行ない、その蛋白がほぼ固定できた。これらの研究過程で汎用遺伝子操作系の有効性が確かめられた。有用酵素生産法についてはalk遺伝子群のコピー数増加を試みたが、形質での増強は認めなかった。転写プロモーターや発現制御系の改変を考えている。
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