研究概要 |
長鎖脂肪酸を培地に分泌生産できる変異株Candida lipolytica S-1-34を育成単離することが出来たので、その実用的評価をえるため生産條件の検討を行った。 1. 分泌長鎖脂肪酸の分子種同定を行ったところ、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸が大部分を占めた。したがって燃料以外の使用上の価値は乏しい。 2.分泌生産には培地中のブドウ糖濃度を常に1%以上に保す必要があり、生産持続のためにブドウ糖の連続補添が効果があった。 3.ブドウ糖からのパルミチン酸生成の理論値をつぎの収支式から求めた。 4分子のブドウ糖 4【C_6】【H_(12)】【O_6】+【O_2】=【C_(16)】【H_(32)】【O_2】+8【CO_2】+8【H_2】O から1分子のパルミチン酸の生成があり、ブドウ糖の熱量の約90%が脂肪酸に回収される。 4.現在までに得られたパルミチン酸の生産効率(又は収率)は対消費プドウ糖20%(重量)で、上記理論式の約55%相当である。 5.より高収率を目指すには通気條件の厳密な設定を行う必要がある。 6.ここに得た分泌醗酵菌株による長鎖脂肪酸の生産は、プロセス的に極めてユニークであるが生産物の付加価値が乏しく実用的評価は低いものと判断した。 7.以上の結果をうけて、付加価値の高いアラキドン酸,γリノレン酸等の多重不飽和長鎖脂肪酸の分泌生産が可能かどうか試験を行った。 8.接合菌類に属するConidiobolus heterosporusが1リットル培養で、乾燥菌体17.8g,脂質2.5g,アラキドン酸1.0gを生産することが判った。 9.脂質の大部分(全脂質の60%以上)が細胞内外に油滴として分布し、油滴の構成脂質は中性脂肪約56%,りん脂質7%,ステロイド,ジグリセリド等であった。 10.中性脂質の構成脂肪酸はアラキドン酸20%,イソ【C_(14)】-飽和脂肪酸60%であった。 11.C.heterosporusは中性脂肪せ資化出来る株であり、中性脂肪の分泌生産に可能性が生じた。
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