アセチル化やメチル化といった小さな置換基の導入による内部可塑化では、木材に十分熱流動性を与えるほどまでには可塑化されないが、それらにさらに他材料とのブレンドやグラフト重合といった外部可塑化を加えると、基本的に熱流動しうるものとなることが知られた。 一方、化学修飾木材を反応性の低分子化合物に溶解する手法が見い出された。従って、熱圧成形や反応により木材樹脂成形物が得られることとなり、合理的な組合せを用いれば、物性の優れた新材料が得られることが知られた。これは、低級材や木材工業廃棄物の新しい利用法につながる知見であり、実用性も認められる物である。事実、極く最近この範疇に入る木材樹脂化材料が、開発すべき新材料として、我が国の工業界でも取り上げられるようになった。例えば、フタル酸エステル化木材などとビスフェノールAジグリシジルエーテルの組合せにより物性の優れた成形木材の開発が試みられている。 一方、無処理木材と変性ポリプロピレンとを加熱下で混練する過程で、両者間にエステル結合を生じ、一種の化学修飾が行われて、その成形により物性の良好な成形物が得られることが知られた。これは極めて実用性の高い知見である。他方、化学修飾木材を、反応性化合物に溶解し、レゾール、ウレタンあるいはエポキシ樹脂化する研究を進めることにより、優れた接着剤および成形材料が得られつつある。 素材のアセチル化などによる物性や性能の改良と建築材料への適用については、主としてアセチル化単板からのLVLや合板について検討された。表面性の改良された、化粧性、耐久性、耐朽・耐蟻性が格段に良好な材料が得られている。分担研究者の所属する大建工業では、その工業化が図られている。この材料の発展を図るためアセチル化木材をさらに合成高分子と複合化した材料の発展が試みられ、粘弾性的検討を含め物性試験が行われ、優れた性質が知られた。
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