当初の研究計画通り、シロサケ(s)の成長ホルモンはシロサケ、ギンザケ、およびニシマスの成長を促進することを証明して、これがサケ科魚類において実用化可能であることを示した。また、SGHは海水適応に関与することを示した。一方、遺伝子組換之法によりウナギ(e)のGHの大量生産を可能とした。さらに、コイ(c)のGHを精製した。【◯!1】シロサケのGH:sGH(1-10μg)をシロサケ、ギンザケ、およびニジマスの稚魚に7日於きに合計6回腹腔内注射した。10μg注射群のシロサケは注射開始から6週間目に対照群と比べて体長で1.8倍、体重で1.9倍の増加率を示した。ギンザケとニジマスにも同様の効果があった。また、GH溶液(30ppm)にシロザケを30分あるいは60分間、4日於きに5回液浴した。液浴群は最初の液浴から二四日目に対照群に比べて体長で1.2倍、体重で1.5倍となった。【◯!2】ウサギのGH:遺伝子組換之法によりeGHの大量生産を可能にした。手法は60年度のsGHの場合と同じである。またeGHの特異抗体を調製し、これを用いる免疫組織染色法で産生細胞を同定し、またラジオイムノアッセイ法を開発した。【◯!3】コイのGH:コイの脳下垂体塩酸アセトン抽出物をゲル濾過と高速液体クロマトグラフィーに付してcGHを精製した。これの分子量、等電点、およびアミノ酸組成を決定した。【◯!4】サケ科魚類におけるGHの生理学的特性:淡水から海水に移したシロサケ、ギンザケ、アマゴ、およびニジマスの稚魚の血中GH濃度は増加した。述に海水から淡水に移したとき血中GH濃度は減少した。また、高カルシウム水中で血中GH濃度は減少し、低カルシウム水中では増加した。一方、淡水中のギンザケ血中GH濃度は概ね一定であったが、海水中では成長の悪い個体の血中GH濃度は正常に成長した個体の3倍も高いことがわかり、成長機構の解明に関し新しい検討課題となった。
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