用水管理システムの開発にむけて、昨年度に引続いて、わが国の代表的な水系群の用水管理機構を分析した。本年度は、水系内の水需要の実態の分析を通して、人為的用水管理の特徴を明らかにした。その成果は各水系について次のようにまとめられる。 1.小貝川水系内用水管理システム:小貝川水系の3堰の1つである福岡堰地区に関して、用水取水の実態から降雨の有効化の程度を分析した。全潅漑期間を通して降雨を有効に利用していることが理解されたが、降雨が有効化される限界量(不感帯幅)があることが明らかにされた。その量は約13〜15mmであることが明らかになった。 2.石狩川水系次数と用水管理システム:石狩川水系は次数分類で1〜6次で表現できるが、用水の水源施設は1、2次河川に多く、揚水ポンプは6次に集中していることが明らかになった。また、本水系では流域面積が水田面積に比べ多く(8:1)、融雪流出が豊富なため用水源は安定している。したがって潅漑期の降雨の有効化率は低く、ほとんど活用されていない。5、6次の圃場レベルでは、配水管理用水が比較的大きいことが明らかになった。 3.愛知川水系内の支線レベルでの用水管理システム:愛知川地区は4つの幹線水路が走り、これらの支配区域の中で、水田単位面積当りの取水量に大きな差のあることを明らかにした。この理由を解明するために実態調査を行って、水需要に差のあることを明らかにした。なお、琵琶湖の逆水利用をしている野州川水系においても、用水管理状況を調査し、用水取水の難易度と管理システムの間の格差を確認した。 4.嘉瀬川水系内のクリーク管理システム:貯水池からクリーク水田地帯までの水管理システムを上位階層、中位階層、下位階層の3つの階層に分割し、それぞれの機能を分析した。その結果、用水の有効化率は120〜130%に達していることが明らかになった。
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