本研究は世界で初めての化学修飾による木材溶液を石油とのハイブリッド燃料として、あるいは石油なしの単味として熱機器に利用できるかその適用性を調べることを目的として行われた。その結果、気化燃焼によるガソリン機関及びポット式バーナでは主として分留温度の差により木材成分が残留し燃焼残渣をはじめ燃料供給系に付着する等の問題を生じ、その解決は容易ではないことが判明した。よって、ディーゼル機関及びガン式バーナによる噴霧燃焼機器への適用性を調べた。その結果、バーナへの適用には問題なく、ディーゼル機関については石油とのハイブリッド燃料の場合、木材含有率の増加とともに燃料が悪化するものの、単味でも始動に難渋することはなく一応の性能を示すことがわかった。次いで、木材含有率を高めることのできるエチル化法による木材溶液化燃料(木材含有率18.4%)を調製し、単味でディーゼル機関に適用した。供試燃料が8.9cSt/30°Cと高粘度であることも加わって標準状態の機関では著しい燃焼の悪化を示した。燃焼解折の結果、着火遅れが顕著であり拡散燃焼が速かに終息することが熱効率低下の主因であることがわかった。そこで、燃料噴射弁の開弁圧を変えることにより噴射時期を早める実験を行ったところ、燃焼の改善に有効であるとの成果を得た。 今後に残された問題としては燃料調製に用いる触媒とその中和剤を適切に選定し燃焼残渣の生成の防止をはかるとともに、より安価な木材溶液化燃料を量産できる方法を追究することである。
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