生物にとって、光の内容は、自分が入手出来るエネルギー源の存在を保証する因子と、そのエネルギー源がそこに存在する事に関する情報源の二つに大別される。一般的に言ってエネルギー源のスペクトルとそれに関する情報源のスペクトルは、必ずしも一致する必要はなく環境としての光の評価には上記の点を含めた方法が望ましい。本研究の目的である等価光量子計は、1)生体の光化学反応は、光量子数に基礎を置いているので、強度の単位は、エネルギーではなく光量子数であること、2)夫々の光受容体に対する、複合波長光である環境光の、各波長の寄与を、受容体の吸光スペクトルによって重みをつけて評価する、3)指標の数は出来るだけ少なくし(出来れば一つ)、しかも異なる受容分子に対する有効性を比較出来るものであること、などを考慮し設計された。全ての波長に於ける光量子を、作用スペクトルや、受容分子の分光によって求めたスペクトルを用い、その受容分子の吸収極大波長の光量子数に換算し、"極大波長等価光量子"数と呼ぶ指数を求める装置を作った。この指標は種々の波長の混りあった光が、ある受容分子の吸収極大波長で照射したばあい、どれだけの光量子数と等価になるかを示すものである。光平衡があると考えられる二色素系に於いては、"極大波長等価光量子"数を用いて二つの色素の平衡時の相対濃度が求められる。また稲の葉の葉緑素のように吸収極大波長での光学濃度がフィールドでの測定から推定出来る場合には総吸収光量子の"極大波長等価光量子"数を得る事が出来る。 代表的な二色素光受容系(ロドプシンとナタロドプシン)を持つ、ショウジョウバエにおいて、複雑なスペクトルを持つ螢光燈の光を照射した後に両色素の定量を行ない、この値を本研究の装置"極大波長等価光量子"計によって求めた"極大波長等価光量子"数から予測することができた。この指数の有効性が実験によって確認された。
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