研究概要 |
人乳には乳児の下部消化管内にビフィドバクテリウムの生育を促進し、その菌叢を優位とする各種の含窒素少糖が含まれているが、牛常乳には含まれていない。しかし、最近になって牛初乳中にはこのビフィドバクテリウム生育活性のあることが明らかとなり、その活性がk-カゼインと遊離糖質画分に随伴することが知られるに至った。そこで、本試験研究においては牛初乳からまずk-カゼインを分離して、この初乳k-カゼインから糖鎖を遊離調製する方法と、牛初乳から直接遊離糖質を分離調製する方法の開発を試みた。これらの両画分には、ビフィドバクテリウム活性を現わすための基本となる、β-N-acetyl-glucosaminide構造が存在しているからである。 牛初乳を脱脂した後、Alais & Jolle'sの方法に準じて全カゼインをまず調製し、Sephadex G-150によるゲル濾過にかけてk-カゼインを得た。ついでpH6.5、30分間、キモシン(0.7R.U./mg k-カゼイン)を作用させ、24%トリクロル酢酸可溶画分を分離し、エチルエーテルでトリクロル酢酸を除去した後、脱塩水に対して透析し、カゼイノグリコペプチドを得た。これをさらにプロナーゼ、ついでパパインで、それぞれSpiro,Pamerの方法によって処理し、Sephadex G-25カラムを用いてゲル濾過を行ない、中性糖反応画分を集め、凍結乾燥すると、牛初乳k-カゼイン由来の機能性少糖が調製された。 また一方、牛初乳を遠沈して脱脂し、pHを4.6にしてカゼインを除去する。上澄に硫酸アンモニウムを4℃で飽和させ、生成した沈殿を遠沈除去し、塩類をピリジン添加によって除去し、減圧乾涸したものを水溶液として、さらに濃縮してラクトースを分別除去した。残存する微量のラクトースはBiogel P-2カラムによるゲル濾過によって除去し、DEAE-Sephadex A-25カラムにかけ、濃度勾配法によって溶出し、カラムに未吸着の機能性中性少糖が調製できた。
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