研究概要 |
われわれは、3,6,9および12°/【秒^2】の角加速度をもって回転しはじめ、120°/秒までの一定角速度で時計方向および反時計方向に水平回転し、その後、急停止するよう設計された回転台をもった水平加速度回転刺激眼振装置を試作した。この装置は12ボルトの直流によって駆動されており、かつ遠隔操作できるスイッチを取り付け、動物に接近することなく回転台を回すことができるよう工夫された。この回転台上にケタミンまたはペントバルビタール麻酔したネコを乗せ、微小電極法によって神経群発放電および単一神経の軸索内電位を記録した。さらに、この新しい装置を用いて、前庭一眼反射に対する脳幹諸核からの調節機構を解明することを試みた。動物を3°/【秒^2】の角加速度にて回転しはじめ、90°/秒に達した後、一定角速度にて60秒間回転させた時、外転神経および前庭神経に律動的放電が観察された。これらの放電は、記録と同側の脳幹小細胞綱様核に100HZ以上の反復刺激を与えた場合に、頻度依存性に抑制された。このことは、小細胞綱様核の活性化が遠心線維を介して半規管内の一次求心性神経末端を抑制する可能性を示した。それ故、この効果をさらに明らかにするため、前庭神経の一次求心性線維の軸索内電位について検討した。求心性単一神経線維はその自発発火パターンにより、規則型、中間型および不規則型の3群に分類された。小細胞綱様核に100HZ以上の反復刺激を与えると、不規則型と中間型線維の自発発火は抑制されたが、水平角加速度刺激による発火数の増加は、小細胞綱様核の反復刺激間にも残存した。しかし、規則型線維の自発発火および正弦性の水平回転刺激に対する反応は、小細胞綱様核の反復刺激により影響を受けなかった。以上のように、今回新しく作製された装置は、前庭一眼反応系の研究分野において、極めて有用なことが判明した。
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