本研究では、ウシパピローマウィルスをベクターとして、クローン化したヒトインターフェロン(IFN)-αや-γ遺伝子、並びに、他のリンフォカインタンパク質を構成的に効率よく、分泌生産するマウス細胞の樹立を計画した。 本年度は、59年度の本研究で確立されたヒトIFN-γを高能率で生産するマウス細胞株を 無血清培地で、3〜10lの規模で培養した。 この培養液より、ヒトIFN-γを天然のIFN-γを精製するのに用いられた方法、あるいは抗IFN-γモノクローナル抗体を結合したSepharoseを用いることにより均一タンパク質にまで精製した。 その結果、1lの培地から、約1mg近い精製IFN-γが得られた。 このタンパク質には糖鎖が付加されていることがSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による移動度から予想された。 また、その【NH_2】-末端は天然のIFN-γと同等のアミノ酸配列から始まっており、ピログルタミンとしてblockされていることが確認された。 一方、IFN-γ産生マウス細胞を継代するにしたがい、IFN-γの産生量が低下することが観察された。 この原因を探る目的で生産量の低下したマウス細胞よりDNAを調製し、IFN-γ cDNAをプローブとしたSouthern hybridizationにより解析したところ、IFN-γ cDNAの上流に結合したSV40初期遺伝子のプロモーター部位に欠落がおこっていることが判明した。 天然ヒトIFN-αおよび大腸菌で生産されたヒトIFNα-2に対する2種類のモノクローナル抗体を調製したところ、これら2種類のモノクローナル抗体は 大腸菌で生産されたヒトIFN-α5とマウス細胞によって生産されたヒトIFNα-5とで異なる反応性を示した。 この結果は、大腸菌および動物細胞によって合成されたIFN-α5タンパク質は、その一次構造が同じであるにもかかわらず、三次構造が異なっている可能性を示唆している。
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