微量の生体試料に含まれる蛋白質の検出には、ニトロセルロース膜上での抗体を用いたイムノブロット法(ウエスタンブロット法)が用いられ、その応用は急速に広まって今や蛋白質分析の不可欠の技術となりつつある。本研究は、従来専ら目測によって定性的に陽性度を評価するにすぎなかった本法に関し、これを定量化することを目的として行うものである。多様な試料と多様なブロット及び検出標識条件に対応できる高感度かつ多機能な自動定量装置を試作し、これを主として細胞内酵素蛋白質または制御蛋白質の特異的超微量定量に応用しようとするものである。 前年度において光学濃度測定用部品及びデータ処理装置の購入をおえていたので、本年度はこれに加えて画像入力用部品を整備して、次のような研究成果をえた。 ウシ血清アルブミンを検体とし、これを常法によりSDS-ゲル泳動後、ニトロセルロース膜に転写し、抗アルブミン抗体をペルオキシダーゼで標識したものを用いて、抗原バンドの検出を行った。蛋白質定量化のためのブロッティング条件の適正化について研究したところ、定電圧15V/cm、100分の泳動でゲルからニトロセルロース膜への完全転写が行われることを知った。ペルオキシダーゼの基質として、4-クロロ-1-ナフトールを用いた場合は100ngまで、また、0-ジアニジンを用いた場合は5ngまで、さらに、3、3′-ジアミノベンジジンでは50pgまで測定可能であった。 一方、イムノブロット法を用いた細胞内蛋白質の分布研究は、細胞内のカルパイン-カルパスタチン系を中心に、盛んに研究されたが、これを自動定量化するには至っていない。
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