ヒト成熟肝実質細胞の増殖をin vitroで促し、肝炎診断ならびに肝炎ウイルスワクチン開発の場としての培養プレート(Hepa-plate)の作製のための基礎検討を行った結果、インスリンとEOFで約20%の肝細胞が増殖に入り、さらに血小板から発見した肝再生因子であるHGFを添加することにより50%以上のヒト肝細胞を増殖させることに成功した。ヒト肝細胞の増殖さらには継代系確立のためにはHGFは必須因子であり、HGFの完全精製、構造解析、遺伝子クローニングによる発現系での大量生産は重要課題である。そのためHGFの血小板からの完全精製の努力を行い、ラット2000匹の血小板から約30μgの純化HGFを得ることに成功した。N末端から15残基の構造決定にも成功し、現在合成DNAプローブを用いてHGF遺伝子のクローニングを行っている。したがって本研究課題の大すじの目的はヒト肝細胞の増殖系の確立でほぼ達成されたと考えられる。 次にヒト初代培養肝細胞を使ったB型肝炎ウイルス感染実験であるが、培地にB型肝炎ウイルスを加えることによってin vitroで感染させる当初の目的は失敗にきした。現在はマイクロインジェクション法を用いてB型肝炎ウイルスを培養肝細胞内で感染させる方向に努力を行っている。非A非B肝炎ウイルスについても同様なin vitro感染系への検討を行うべく現在準備中である。
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