癌細胞を塗抹標本や組識標本の中で診断するさい、病理形態学者の判断にできるだけの客観性を与えうるような定量的データを導入することは、ひとつには患者の以後の生活を左右する診断の科学的妥当性を高めることになりいまひとつには、将来ますます拡大されるであろうスクリーニングに対して人の力だけでは対応しきれなくなる部分を機器の導入によってカバーするための重要な意味があると考えられる。この目的のために私たちはDNAの定量とその分布の形態学が有用なマーカーであることを確立することができたので、本研究では定量誤差を最小にすることのできるレーザスキャンをとり入れた測光螢光顕微鏡を試作し、本法の実地における問題点と可能性を明らかにするための基礎研究を行ってきた。 昭和59年度の予備実験をオリンパス光学開発部と共同で進めバラックシステムながら試作第1号機と第2号機について、光学レンズ系、光束スキャニングシステムの安定性のテスト。スキャンデータととり方、画像データの処理法をチェックし、実行試作機LSM-Gの設計を完成した。 昭和60年度はレーザスキャン測光装置LSM-Gをオリンパス光学に発注し、2度の大がかりな改造ののち試作機を完成させた。 昭和61年度は本機と、教室既有のカラーイージアナライザを32ビットデスクトップコンピュータ画像処理用ソフトウェアIMAG-9によってリンクし、試行をくりかえした。その結果、きわめて細いレーザビームでスキャンする判点として、ノイズの少いDNA量の濃度情報と解像力のよい空間画像情報を同時にうることができる事実が、予想どおり、示された。また、共焦点螢光法を用いることで、重っている核も別々に測光できることが明らかになった。 本機をスクリーニングに実用化するのには、光源の波長を可変にすること走査を速くすることが次の目標である。
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