研究概要 |
損傷の生活反応判定法として著者が見出した損傷組織のFibrin形成能(F-能)について、昨年の科研費によって、その測定にmicro-plateを使用する新しい方法を考案した。本年はこの方法を用いて火傷,凍傷につき生前・死後損傷の鑑別、受傷後の時間判定への応用につき検討を行った。実験は総てRatで行う。1.火傷:Ratの背中の皮膚に赤熱した鋼鉄片を接触して火傷の試料とする。受傷後の時間として1・3・6・18時間、1・3日後のものとする。創縁より厚さ20μmの切片を5000μm迄とる。F-能20μg以上をもつ範囲は受傷1時間より経時的に範囲が拡大し、受傷18時間で最大の範囲となる(5000μm)。1日後には範囲が縮少し3日目も同様(3000μm迄)である。F-能の最高値を示す時期は受傷後18時間のものである(73.2μg)。2.凍傷:クライオクールで-85℃に冷却した断面積1.0×0.5【cm^2】の鋼鉄を20秒間接触させて凍傷を形成した。凍傷中央切断面より火傷同様厚さ20μmの切片を5000μm迄とりF-能を測定する。凍傷試料は受傷10・30分、1・3・6・18時間、3日のものについて行う。その結果としてF-能20μg以上の値をとる範囲は、受傷後10分では創縁より2400μm迄が該当し、30分後には急に範囲が拡がって5000μmの範囲にまで達する。1・6時間で梢々縮少するが略々18時間迄この状態が継続する。しかし3日目には範囲が狭くなる(2300μm迄)。F-能の最高値を示す時期は18時間後(91.3μg)である。 以上の結果は火傷の場合はF-能出現の時期が遅いが、凍傷は受傷10分より既に相当範囲で認められる。両者共に最高のF-能を示すのは受傷18時間のものである。死後の損傷では両者共にF-能は5μg以下の極く低値であるので、両者の生前・死後の鑑別は容易で、F-能20μg以上の範囲又その最高値によって或程度の受傷時間推定の参考とし得るものと考える。
|