研究概要 |
維織微小循環系は細胞の生命維持に不可欠で、近年各種疾病の成因、進展との関連が論じられている。本研究では可視光,近赤外光を高性能撮像素子で同時計測、画像処理し、組織の三次元の微小血管床の赤血球の流れと、酸素,物質の代謝状況をとらえるシステムを作成し、消化器疾患の病態生理を三次元的に解明し胃癌,肝癌などの内視鏡診断機器へ発展させるのを目的とした。すなわち、TV顕微鏡システムを作成し、dual-slit phot ometry法により、肝類洞および胃粘膜と粘膜下の微小血管網の血流速度を測定すると同時に、蛍光物質を用い細胞内物質転送を画像化定量化した。臨床的には、赤外線電子内視鏡一画像処理システムを作成し、ヒトの胃粘膜及び粘膜下層の血行同時解析を可能とした。また、レーザーを光源に種々の蛍光物質を励起し、癌組織での血流と物質代謝の変化を検討した。その結果、正常肝の類洞内血流速度は各類洞により異なっており、門脈域より中心静脈域が大であった。障害肝では白血球粘着などに伴い、局所の微小循環障害が示され、肝細胞内の物質輸送の障害が定量的に示された。また、リピオドールエマルジョンの肝内分布により、肝癌部ではKuppfer細胞を中心とする食機能が周囲肝組織に比し、低下していることが示された。顕微鏡及び赤外線電子内視鏡システムを用いた胃粘膜微小循環画像からは粘膜内の微小循環動態の多様性、胃粘膜障害時の胃壁各層の微小循環変化の相互関連性が示された。ヒトにおいても胃粘膜及び粘膜下血行の同時解析は可能であり、本研究により、可視光・近赤外光を用いた消化器組織、癌の微小循環動態、細胞内物質輸送を三次元的に解析し、画像表示する手法が開発された。
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