本研究の昭和59年度実績報告書に記載した各項目のほかに、昭和60年度において、あらたに達成された実績は次の通りです。 1) ヒト尿コロニー刺激因子(CSF-HU)を完全に純化することに成功した。従来のDEAEセルロースカラムやゲル瀘過法に加えて、フェニールセファロースカラム、高速液体クロマト(HPLC)のクロマトフォーカシングカラムや逆相カラムを用いて比活性1.9×【10^8】u/mgにまで純化した。これは従来のいづれの報告よりも高純度であり、これを用いてN末端アミノ酸配列の決定の作業を開始している。この純化したCSF-HUとすでに調製ずみの抗CSF-HU抗体を用いてRadioimmuroassay系を確立し、各種病態における血中レベルの測定を開始している。 2) CSF-HUが各種白血病細胞に対して増殖促進効果をもっていないことを明らかとした。 3) In vitroにおいてCSF-HUがヒト末梢血単球を刺激して、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の産生を促進することを明らかとした。 4) 従来臨床試験に用いていた標品(preparation 【I】)は癌化学療法後の顆粒球減少症を統計的に有意に予防する効果があったが、約30%の症例に発熱などの副作用がみられた。そこでpreparation 【I】をHPLCを用いてさらに精製しpreparation 【II】を得た。この標品8×【10^6】Uを33名の担癌患者に7日間投与したところ、癌化学療法後の顆粒球最低値が896±871(コントロール:494±336)と上昇し、顆粒球500以下の日数は2.9±3.8日(コントロール:4.7±3.7日)と短縮し、また副作用はまったく認められなかった。 4)これらの事項をふまえて第3相試験を実施する予定である。
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