本年度は植込み型人工膵臓のグルコースセンサーの開発に重点を置き改良を行なった。まず従来より開発を行なってきた棒状の直径6mm、長さ30mmの皮下型グルコースセンサーのグルコース制限透過膜をアセチルセルローズ膜に変更し、その性能を改良した。-0.6ボルトの印加電圧を加え、in vitroの実験で37℃で【Po_2】5%の条件で連続使用を行ない約50日間以上にわたり高濃度のブドウ糖の識別が可能であった。またブドウ糖負荷に対しては、10秒以内に反応し、5分以内に100%応答を示した。さらに、植込み用のバックアップシステムを新たに開発し、24時間正常犬内に植込み応答性を検討した。この結果24時間の植込みでは測定が可能であることがわかった。また、in vivoにてグルコースセンサーの間欠使用を行ない約100日まで使用できることがわかった。次いで現在の棒状皮下型グルコースセンサーが大きいため実際の臨床使用のためさらに小さな針状グルコースセンサーの開発を平行して行なった。これは、グルコースオキシダーゼを吸着により固定化したグラファイト電極にて行なった。本電極は、P-ベンゾキノンの存在下でグルコースの酸化に際し定常電流を与えることを利用している。針状で直径1.3nm、長さ15mmのグルコースセンサーである。in vitroの実験ではブドウ糖の負荷に対し10秒以内に反応し、100%応答は5分以内であり、間欠使用では約30日間使用可能であり従来のClark型酸素電極方式に劣らなかった。in vivo実験ではブドウ糖負荷に対して出力が小さくこの増強が必要である。今後この方式に対して還元物質の影響を出来るだけ少なくすることが本センサーが臨床使用に耐えるものに発展させうるかの鍵を握っている。
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