本研究は体内にすべてを埋込む人工心臓の開発を行うことを目的としている。昨年度で基礎原理の確認とプロトタイプ機の設計・製作を行い動作評価を行ったが、本年はそれをさらに具体化し、駆動系・血液ポンプ・エネルギー源・エネルギー送信系を含めた全システムを検討し、実働する集積化した装置の設計・試作に入った。 具体的には液体駆動のダブル・サック型血液ポンプをそれぞれ、収縮期・拡張期に駆動パルスを与える2台のブラシレス・DCモータで駆動し、約4L/分の拍出量を得る人工心臓システムを試作した。駆動のための液体はシリコン・オイルを用い、24V0.5AのDCモータを使用している。駆動用の電子回路もシリコン・ホイル中に浸し、放熱・防湿を行うよう考えられている。本システムは体内部分にフエライト・コアの有芯経皮トランスを用いて電力を送電する方式を採用し、体内部にはNi-Cdの電池を利用して非常用の電源とすることとした。本システムはプロトタイプは従来のサック型血液ポンプ2台を用い、長い駆動液体の配管系を持つ形式としたため、十分な拍出量と圧力回復が得られなかったが、全部をアセンブルし、10cm×10cm×5cmの立体中におさめたシステムでは効率よく4L/分の拍出量が得られる予定である。 心房中隔をプッシャー・プレートの如くに動かす形式のポンプは新しいサーボ型DCモータの採用により自由にプログラム可能の駆動方式が開発される予定であり、現在血液ポンプとDCモータを結合しプログラムによる駆動を開始する所である。 さらに、60kg程度の体重の山羊にポンプを埋込む可能性を検討するために、空気圧駆動方式の両心室一体型のポンプが開発され、動物実験により、寸法的検討がなされているが、心腔内にこれらのポンプを全部埋めこむのは現在の所多大の困難があることが判明している。
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