研究概要 |
本研究の目的は老化の過程における部分的歯牙欠損症に対する補綴処置に際して、たんなる形態学的欠損歯の補綴の人工歯ではなく、生体に生理学的に協調しうる人工歯形態とその補綴処置をどのようにして求め得るかを解明し、この臨床応用を容易にすることにある。この目的を追求するにあたって補綴処置効果、特に咬合接触の微小変化をたんなる被験者の感覚にたよることなく客観的資料として表示を可能にし、比較診断を行いうることが必須の要件になる。そこで咬合、咀嚼等の指標として従来より多くの研究者達によって行われてきた咀嚼筋活動の筋電図学的データー、下顎切歯点における下顎運動路の機能的解析等、さらに咀嚼圧の計測など電気的にデーターを抽出しうるものを対象として各要素の変化量と要素間の関連性等をパーソナルコンピューターを使用し、データーの収録、演算処理、グラフィクディスプレーを行わせ、全て数値的結果として検出し診断の一助とする装置システム、および同ソフトウェアの開発を行い第70回日本補綴歯科学会において臨床的補綴処置効果判定が可能なことを発表した。さらに第72回日本補綴歯科学会において新しい人工歯の咀嚼機能の調節制御能について、また臨床的有意性について公表した。以上の結果から残存天然歯列に対咬する人工歯に必須の条件とは何かを求めるためにはその支持能力の診断と中心咬合の安定性であることが推測された。そこで本研では前述したEMG,MKGデーター解析装置を使用し新たに、フレンチング解析ソフトを開発し支持能力をかみしめ時の咀嚼筋活動量の比較観察により解明することを試みた。さらにこの際人工歯の咬合面形態の変化がどのように関連してくるかも明確にすることができた。結果の主なものは臼歯部の支持点回復による著るしい側頭筋筋活動量の経時的増強、またその際の欠損部顎堤の形態と対咬歯支持咬頭との位置的関係が支持能力の診断に大きく影響することである。
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