ジルコニア・ファインセラミックの歯科インプラント臨床応用への可能性を追求している。昭和59年度においては、2頭のカニクイザルの下顎臼歯部にジルコニア・インプラント・ピンを支台とした連結冠を装着し、これらの組織学的検索を行い、光顕的にインプラント周囲組織は正常歯周組織に酷似していることを報告した。今年度は、2頭のカニクイザルの下顎臼歯部にジルコニア・インプラント・ピンを植立し、これらを支台とした単独冠および連結冠を装着した。これらの冠について、正常咬合のものより2mm咬合を挙上した負担過重状態を与えてインプラント周組織の変化を検討した。 それぞれについての組織学的検索結果は以下のとおりである。1)負担過重単独植立例については、肉眼的に限局性の発赤、腫脹を認め、軽度の動揺を示していた。インプラント周粘膜は、角化を示す重層上皮から成るインプラント周上皮が小乳頭状の上皮脚を有して被覆している。インプラント周上皮に連続したインプラント接着上皮は、インプラント体に沿って細長いクサビ状に深部に侵入している。接着上皮下には、好中球、リンパ球、形質細胞などが瀰漫性に浸潤し、好中球が接着上皮内および接着上皮-インプラント体間隙にも遊走、浸潤している。一方、インプラント支持骨部では、インプラント体に対向する支持骨表面にはほぼ全域に破骨細胞が観察され、不規則に吸収窩が存在し、界面付近には好中球、組織球などが軽度に浸潤している。2)負担過重連結植立例については、肉眼的に発赤を認めるが、動揺はない。インプラント周粘膜は、負担過重単独植立例とほぼ同様の所見である。インプラント支持骨部の繊維性組織は狭く、破骨細胞による骨吸収も少ない。これらの所見は連結による負担の軽減に基づくものと考えられる。
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