本研究は、顎関節疾患の総合的X線診断法開発の一環として、顎関節硬軟組織成分の形態的変化、相対的位置の変化をすでに開発した三次元計測法を改良して迅速かつ正確に明らかにできるシステム開発の可能性をさぐることを目的とした。 1.顎関節腔造影法によるX線診断学的研究:三次元計測法の改良法を検討するため、顎関節腔造影法を施行した。造影の手技を確立した後、適応症と診断した症例に二重造影法を施行し、関節円板の形態と位置の異常に対する臨床症状、硬組織変化との関連性を検討した。その結果、以下の研究を遂行することとした。 2.デジタルX線撮影法による顎関節断層像再合成処理および画質の改良に関する研究:一回の断層撮影時の多方向からのX線テレビ像をデジタル化し、任意の深さの断層像を再合成するdigital tomosynthesis処理と断層像形成過程における画質改良処理(積分、歪補正、double subtraction)による断層像に含まれる障害像の軽減処理を行えるシステムを試作した。 3.透視変換を用いた三次元座標再構成法の下顎窩、関節円板、下顎頭の相対的位置関係の分析への応用:(1)下顎頭長軸の三次元的計測…下顎頭長軸の三次元座標を再構成するための投影法および計測の精度を検討した。(2)顎関節規格断層撮影法…断層面の三次元傾斜と位置の補正法を考案し、その精度を検討した。(3)X線映画二方向撮影法による不顎頭の運動の三次元計測法…X線映画像の歪を補正し、さらに透視変換をX線映画二方向撮影法に応用し、単純二方向撮影法と組み合わせて、下顎頭の運動を分析する方法の精度を検討した。その結果、単純二方向撮影のみでは0.3mm前後、断層撮影法と組み合わせると0.5mm前後、X線映画法と組み合わせると0.7mm前後の精度が得られた。基準点、計測点それぞれの三次元座標の計測精度の向上により、透視変換による三次元座標再構成の精度自体の向上をはかることができると考えられた。
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