高度情報化社会の到来と共に、大量のデータを効率良く管理するデータベースシステムの重要性は日に日に増大している。中でも関係データベースシステムは、その操作の容易さ、データ独立性の良さ等の理由により将来に於て標準的なデータベースシステムとなることが期待されている。しかし一方で、1970年代の研究を通じ、通常のノイマン型計算機上にソフトウェアによって実装された関係データベースシステムでは実用規模のデータベースを充分な速度で処理できないことが明らかとなってきた。このような事実を背景に、本研究では並列関係データベースマシンを試作し、その評価を行うことにより、実用規模の関係データベースを充分な効率で処理可能なシステムの構成法を明らかにし、もって並列関係データベースマシンの実用化の見通しを得ることを目的とした。本マシンの設計に際し、関係データベース処理の基本単位をオペランドデータ全体が構成するデータストリームとし、その流れに沿って全ての演算を実行するデータストリームモデルを確立した。本モデルを基に、各演算のデータストリーム指向アルゴリズムを提案し、その詳細な実装方式を明らかにした。これらアルゴリズムはHashによる負荷の動的分散とハードウェアソータによるデータの線形時間ソートを基本とする。特にハードウェアソータに関してはその柔軟性を追求し、レコード長、レコード数、ストリーム数等に関し、事実上制約を皆無とする新しい構成法を確立、試作を行った。またデータストリームの初期生成に関しては適応型多次元クラスタリング技法を、データストリームの制御に関してはデータフロー制御に基づく制御方式を考案し、データストリームの生成、処理、制御の観点からこれら諸結果を統合し、試作システムを実装した。以上の成果により、並列関係データベースマシン実用化の為の充分な見通しを得た。
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