本研究の初年度(昭和59年度)に製作した極低温中性子照射した電子顕微鏡クライオ・トランスファー・ホルダーを電子顕微鏡に取り付けての極低温での性能チェック及び性能向上への一部改良を行った。まず前年度では、20K付近で電子顕微鏡像の振動が非常に大きく、ごく限られた運転条件下でのみしか高質の像の観察は困難であったが、ホルダー内部に振動防止補助装置を取り付け、又、ホルダー先端試料部の熱シールド及び汚染防止キャップの改良を行い、20Kでかなり良質の像がとれるところまで進歩した。しかし、これ以上の冷却は本装置の材質・構造上の問題もあり、困難である事が判明した。本年度は、米国ローレンス・リバモア国立研究所での核融合中性子による極低温照射用に、照射済み試料を真空中にて照射クライオスタット中より温度上昇なく取り出し、電子顕微鏡ホルダーに装填する試料交換室及び試料を液体ヘリウム容器中に貯蔵するための試料移送室を製作した。本試験研究で購入した二本の液体ヘリウムトランスファー・チューブは、この容器中の試料冷却に使用した。又、前年度購入した電子顕微鏡クライオ・トランスファー・ホルダーの試料部の温度制御をコンピューターで行うようにし、その結果を本年度購入したXYプロッターにて書き出すようにした。さらに、本年度購入したパワープレスは、電子顕微鏡試料3mm直径のものを板状試料より打抜く装置に使用した。本年度で、一応極低温クライオ・トランスファー・ホルダー及びその関連装置の製作を終えて、テストの後、米国ローレンス・リバモア国立研究所の回転ターゲット中性子源施設に、昭和61年2月、名古屋大学プラズマ研究所を通じて送った。この装置を使用しての極低温核融合中性子照射は、昭和61年4月に行われるよう予定されており、本研究代表者がこの実験のために派遣される。本照射実験は、日米科学技術協力事業に基づいて行われている。
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