音声再生は、(1)ろう管の修復とカビの除去、(2)永久保存のためのろう管のレプリカ作成、(3)信号検出、(4)雑音低減の4段階で行なわれた。 1.ろう管の修復とカビの除去:ろう管の特性を調べ、かつカビの性質を知った上で、カビの除去が行なわれた。さらに、破損したろう管については、顕微鏡下でできる限りの修復が行なわれた。 2.レプリカ作成方法の研究とろう管レプリカ作成:歯科技術にもとづいてろう管レプリカ作成方法が確立され、カビ除去と修復が終了したろう管のレプリカを作成した。 3.音声信号検出:接触による触針式と非接触によるレーザー光反射式によって信号検出を行なうための装置が試作された。触針式では、ピックアップの針圧を種々変化させ、できる限りろう管に傷をつけないようにし、溝の谷部に触れながら差動トランスを利用して精度高く溝の深さを計測して音声に変換した。検出出力は、データレコーダおよびフロッピーディスクに保存した。つぎに、レーザー光による音声再生装置を検討し、非接触レーザー反射式による音声再生検出器を完成させた。特に、照射レーザービーム・スポットと再生音の関係を明らかにし、最適スポットによる再生を行なった。さらに、レーザー反射式にもとづく方法の問題点を検討し、かつそれを解決した。最後に触針式再生音と非接触レーザー光による再生音の比較検討を行った。 4.雑音低減:すべてのろう管がある程度劣化している現状を考慮した場合、再生音からの雑音低減は最大研究課題である。音声の明瞭度を著しく向上させ得る雑音低減法は、まだ開発されていない。しかし、雑音の性質を正確に把握すれば改善の可能性がある。検出音声から雑音解析を行ない、2種類の雑音が明らかになった。ランダム雑音はスペクトル領域でフィルター操作により行ない、スパイク状雑音は実時間である程度除去する方法を確立した。
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