研究概要 |
研究目的:ヘルペスウイルス群は、ヒトを中心に広く潜在・分布し、自然宿主への腫瘍原性を内蔵する特異な存在である。本研究は、未だ明確ではないヘルペスウイルス・宿主細胞間の複雑な相互作用を、試験管内実験解析を通じて把握し、ウイルスを原因とするヒトの癌化機構の本態究明に資することを目的とする。 研究成果:ヘルペスウイルス群の主要な構成ウイルスであるEBウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、マレック病ウイルス(MDV)、單純ヘルペスウイルス1,2型(HSV)、および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)について、下記の問題を焦点とし、本ウイルス群による細胞癌化の機構解析を、協同して推進した。 1.ヘルペス遺伝子の癌化機能と細胞相互作用:從来不明であったCMVについて、ゲノムの全領域がクローニングされ、Hind【III】-C断片左端の癌原性が示された。他方、EBV,MDVについて、ウイルスゲノムがそれぞれ特定の染色体・ヒト第6,11,16染色体およびトリ第2、第4染色体上に局在して発癌性を示すことが知られた。 2.潜在ヘルペス活性化因子の構造特性と癌化:腫瘍プロモーターteleocidinの基本骨格(-)-indolactamVの誘導体を多数合成、検討した結果、7位のアルキル基と14位のOH基が盛在EBVの発現に重要な構造であることが明らかとなった。 3.ヘルペス発癌における細胞側遺伝子の関与:遺伝性免疫不全症・運動失調毛細血管拡張症患者由来のEBVトランスフォーム細胞で、早期に染色体転座が惹起され、軟寒天内およびヌードマウスに腫瘍性増殖を見た。こうしたトランスフォーム細胞では細胞性癌遺伝子mycおよびrasが著しく活性化されていることが明らかとなった。一方、HSVトランスフォーム細胞DNAの3T3細胞への移入により、トランスフォームフォーカスが形成され、これが細胞性癌遺伝子の発現に基づく可能性が得られた。
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