α-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γGTP)、トランスフェリン(Tf)等の腫瘍マーカーおよびそれらの特異抗体による癌の診断と治療に関する研究が進められ以下の結果が得られた。 1)AFPに対する精製抗体と制癌剤との複合体を高分子の中間支持体を用いて作製しその有用性を動物実験レベルで確認した。中間支持体にはデキストラン、ポリL-グルタミン酸またはアルブミンが有用であった。抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(MoAb)共に同程度に有用であった。この方法論は他のすべての腫瘍マーカーに対する抗体と制癌剤複合体の研究に応用が可能であろう。2)CEAおよびその関連抗原のMoAbによる解析が進展した。CEAに特異的に反応性を有するMoAbを利用すればCEAの抗原抗体系を利用した癌のイメージ診断および治療に向けて一層の感度上昇が期待される。3)鉄の輸送を司るトランスフェリン(Tf)は細胞増殖にも関連する蛋白質である。腫瘍細胞表面にはTfに対する受容体(TfR)がありこのTfRに対するMoAbを利用しイメージ診断および制癌剤との複合体による癌の治療的応用法が検討され実験レベルで良い成績が得られた。 4)肺癌、腎癌、睾丸絨毛上皮癌、膵癌、肝癌細胞に対してそれぞれ特異性の高いMoAbが利用可能になった。MoAbの認識する遺伝子産物の同定が急がれる。 5)AFP、γGTPの糖鎖に由来するレクチンに対する親和性の相違が肝癌、肝硬変、肝炎等の鑑別診断に応用出来るか否かが検討された。Con-A、LCA-A、E-PHA等のレクチレに対しAFP産生腫瘍では Con-A 非結合性AFPの中等度の増加、LCA-A、E-PHA 結合性AFPは種々の程度度増加し肝硬変、肝炎との鑑別が可能であった。γGTPはE-PHAに対して特異的に反応する肝癌特異的γGTPが応用可能であった。6)ラット肝癌発生過程におけるepoxide hydrolase(EH)の変動と過形成結節に特異的に発現されるPN抗原との関連につき免疫組織化学的に検討された。
|