研究概要 |
分子免疫学的手法を用いて、がん遺伝子の活性化に続くがん抗原遺伝子の活性化、がん抗原の発現、さらには免疫系による認識といった一連のプロセスを解明することを目的とし次の4つの計画を行い下記の成果を納めた。 1.免疫系において重要な細胞膜腫瘍抗原の解析 マウスメラノーマモデルでは腫瘍抗原がGM3(NeuAc)ガングリオシド様物質と蛋白分子が複合体を形成している分子で、抗体、CTLが認識する快定基が共に同一分子上に存在することを証明した。またモノクロナル抗体を用いてメラノーマ抗原遺伝子のクロン化にも成功した。その他、線維眼細胞肉腫や肝癌、骨髄腫細胞系を用いて抗原の多様性とそれによって誘導される反応型の相異を解析した。また腫瘍抗原に対する抗イデイオタイプ抗体を用いてそれが免疫系に重要な快定基となり得るか同定した。一方細胞の活性化に伴なって発現される抗原(110KD)も新らたに同定した。 2.がん遺伝子およびがん化に伴なって変化する遺伝子の発現 フィブロネクチン遺伝子、ras遺伝子を用いて発現調節に重要な頒域を同定し、5′未端プロモーター領域とExon1,2をクロン化し解析してる。 3.細胞の分化脱分化過程に発現される内因性抗原と腫瘍抗原の相関 白血病細胞系を用い脱がん化状態での膜蛋白遺伝子の発現変動を蛋白、mRNAレベルで検索し、そのいくつかの遺伝子単離を行なっている。 4.腫瘍抗原遺伝子のクロン化に必要なベクター系の開発 ウイルスプロモーターを両側端に持つ発現クローニングベクターの開発に成功し、効率良く機能することも確認した。一方モノクロナル抗体とpCV103コスミドベクターを用いてgenomicクローニングが可能であった。この系でメラノーマ抗原遺伝子のクロン化にも世界ではじめて成功した。
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