ヒトにおけるHTLV-【I】感染とATL発症に関する動物モデル系の確立のため、サルにおけるHTLVグループウイルスの感染について研究を行ってきた。これまでにHTLV-【I】のサルを用いた実験感染に成功しているので、本年度は感染予防の研究に着手し、遺伝子工学によって生産したenu遺伝子産物による免疫がHTLV-【I】感染に対して防御効果があることを見い出した。つぎに、各種サル類がHTLV-【I】に類似のウイルス(STLV-【I】)に自然感染していることを明らかにしてきたが、本年度は3種のSTLV-【I】の塩基配列を決定し、HTLV-【I】と90〜95%のホモロジーを示すことを明らかにした。また、これら自然感染サルにおける血液像とプロウイルスの解析から、STLV-【I】がATL類似白血病を引き起す可能性が強く示唆された。さらに、最近一部サル種がHTLV-【III】類似ウイルスにも自然感染していることを見い出し、本ウイルスの分離に成功した。 このように、サルにおけるHTLV-【I】実験感染およびSTLV-【I】自然感染の系は、数多くの共通性から、ヒトのHTLV-【I】感染の動物モデルとして有用であることを明らかにすることができた。今後は、予防法の検討、感染経路の解明、白血病発症機序の解析などにこのサルの系をさらに活用していくことが重要と考えられる。また、サルの系を用いたAIDS関連ウイルスのモデル系の開発の可能と考えられた。
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