東京医科歯科大学のポリポージス腸疾患研究センターに登録されている家族性大腸ポリポージス(FPC)の家系のなかから遺伝学的解析の可能な家系を選定し、本年度は12家系45名の末梢血液と皮膚組織を採取して班員に配分した(岩間)。また一部の試料を用いてリンパ芽球細胞と皮膚線維芽細胞の培養細胞株の樹立と凍結保存を行なった(池内、外村)。さらに、3名の患者より大腸腺腫症に合併した大腸癌組織が得られたので、DNAの抽出およびヌードマウスへの移植を行なった(宮木・湯淺)。FPC患者30名とPeutz-Jeghers症候群患者10名の皮膚の培養線維芽細胞について染色体分析を行ない、構造異常をもった細胞のクローンの出現率が同年令の正常者にくらべて有意に高いことを明らかにした。しかし、現段階ではFPCに特異的と見做される染色体切断部位は見出されていない(池内、外村)。遺伝解析については、配布した血液試料を用いて多型性を示す赤血球型7種、血清型6種、補体型3種、および赤血球酵素型10種の分析を行ない、連鎖検定のための資料を集積した(松本)。また11家系41名の血液材料からDNAを抽出保存し、これまでに單離した9種をふくめ、約50種のRFLPsを検出できるプローブを用意した。さらに試料の揃った2家系について8種のプローブを用いてRFLPsの分離状況を検索し、OS-1とOS-2の2種のプローブで検出できるRFLPsについてlod scoreを算出した(森)。HLAを指標とした検索では、罹患同胞対18組についての各同胞間でのHLAハプロタイプの共有率は、両方とも一致が5組、一方のみ一致が11組、不一致が2組で、HLAとの連鎖は認められなかった(笹月)。連鎖検定に必要な多型性を示すプローブを得るため、ヒトの遺伝子ライブラリーより繰返し配列をふくまないクローンを多数分離し、これらからDNAを精製して多型性を示すクローンを探索中である(湯淺)。
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