性ホルモン依存性癌である前立腺癌、乳癌、内膜癌の日本における発生率は欧米の5-10%と低い。しかし、日本における食事と体格の欧米化とともに増加している。したがって、将来は欧米の様に、日本でもこれらが男・女の代表的な癌になると考えられる。以上のことから、食事と体格の欧米化→ホルモン環境の変化→癌発生の増加の相関を明らかにし、性ホルモン依存性癌増加への対策をたてる。 1.前立腺癌の発生を促進する因子を明らかにするためには、まずよい前立腺々癌の発癌モデルを作る必要がある。本年は、女性ホルモンを反復投与しその間にdimethyl aminobiphenylを投与する方法(女性ホルモンで前立腺を萎縮させ、中止して増殖する時に発癌剤を投与)で、小さい前立腺癌を70%のラットに発生させることに成功した。本法を用い、進行前立腺癌を発生させる因子を検索できる様な体制になった…伊東。 2.男性ホルモン依存性のマウスシオノギ癌を用いる無血清培地の細胞培養の実験で、その作用は癌細胞が分泌する成長因子を介することが示された。本実験系で、性ホルモン誘導性の増殖因子を明らかにして癌発生との相関にせまる…松本、佐藤、寺田。 3.ラット化学発癌乳癌、マウス乳癌の発生は、プロラクチンとエストロゲンで促進されるが、プロゲステロン、成長ホルモンで0軽度に促進された…吉田、長沢、福田、田口。 4.肥満者では、閉経後の乳癌の相対危検率が約2倍であった。本年は、子宮体癌・対照研究を行い、肥満群の体癌発生の相対危検率は30-70才代の全ての年令で2以上であることを明らかにした。肥満は女性ホルモンの増加等をおこし、乳癌、内膜癌の発生を促進すると考えられる…坂元。
|