研究概要 |
CEAは現在最も広く用いられている腫瘍マーカーのひとつであるがCEA分子自体の不均一性、NCA,NFAなどの類縁抗原の存在ならびに高い糖含有量のため、その化学構造の詳細ならびに癌特異性は現在に至るも不明な点が多い。近年細胞融合法により作製されるモノクローナル抗体はこれらの問題点を一挙に解決するのみではなく、その特性からCEAの新しい臨床応用への可能性が期待される。研究者らはこの数年間、個々にCEAあるいは類縁抗原に対するモノクローナル抗体を作製し、独自の観点から研究を積み重ねてきたが、本研究においてはこれらのモノクローナル抗体を比較検討・整理することにより、免疫化学的・分子生物学的あるいは免疫組織学的観点から総合的かつ系統的にCEA分子の解析を行ない、またモノクローナル抗体を用いた高感度微量測定法の確立も目指した。CEA標品および類縁抗原との反応性からモノクローナル抗体を、NCA共通部分に、NFCA共通部分に、ないしNFA-1共通部分に反応するもの、および類縁抗原とは反応せずすべてのCEAと反応するもの、一部のCEA標品とのみ反応するものに分類できた。測定系の腫瘍特異性の感度を向上させるべく、CEAのみと反応する抗体と抗CEA血清または類縁抗原と交叉反応する抗体とのサンドイッチ法を試み、良好な成績を得つつある。糖鎖構造については、精製CEAをメチル化分析した成績などから、高マンノース糖鎖10%、複合型糖鎖90%からなることが判明した。複合型頭糖は【Man^α】1→6(【Man^α】1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4(±【Fuc^α】1→6)GlcNAcを母核に持ち、その4割がbisecting GlcNAcを持つ1から4本鎖糖鎖であった。その側鎖部分には多様な血液型関連抗原決定基が検出されたが、他の精製CEA間でその含有率に大きな違いが見られた。さらに現在CEAmRNAとハイブリダイズしている可能性の高いプローブを得ており、これらの研究は今後CEAのクローニングに応用しうると考えられる。
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