1.胃癌の進展:胃癌の初期進展像を最大径2mm以下の微小癌について観察すると、分化型癌は粘膜の全層に、未分化型癌は粘膜の上半分に拡がっていることが多く、胃癌発生様式が組織型によって異なることが示唆された。(菅野・中村)粘膜下浸潤の経路には4種類ある脈管周囲型が最も高頻度(70%)であった。(中村)胃癌の粘膜筋板接触(MMC)の大きさが2mmを越えると粘膜下浸潤癌存在の可能性が高くなった(菅野)。 2.胃癌の増殖:胃癌のDNA ploidyは進行癌程高くなる傾向があり、DNA ploidy patternを検することにより胃癌の悪性度の判定が可能であるとされた(井口、服部)、最大径5mm以下の微小胃癌の中にもhigh ploidyを示すものがあった(服部、井口、菅野)、ヌードマウス継代腫瘍の検討では、癌のploidy patternと発育速度には特別な関係はなかった(中谷)、ex vivo autoradiography でみると胃癌の標識指数は粘膜内より粘膜下の方が低かった。また、胃癌の組織型間で差がなかった(喜納)、 種々の増殖関連因子が免疫組織学的に検討されている(田原、菅野)、EGF は進行癌の21%(早期癌では0)に、【TGF_2】は進早期癌の60%に陽性であった。EGF陽性胃癌の予後は極めて不良であった。Ha-ras p21は EGF 陽性例の60%に陽性であった。また、胃癌では非癌部粘膜に比しprotein kinase C活性の上昇があった(田原)、MKN28株(分化型癌)とMKN45株(未分化型癌の株化ヒト胃癌細胞を用いて種々の物質の癌細胞増殖に及ぼす影響が検討されている(渡辺)、Transferrinは両株の増殖を促進し、Interferon βは抑制した。Insulinは45株の、またglucagonは28株の増殖を抑制した。 ヌードマウス可移植ヒト胃癌株よりNIH3T3細胞に対してTransforming activityのあるDNAが発見された。これは従来報告されていない新しいoncogene である可能性が高くhstと命名された(杉村)。
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